田瀬法律事務所の日記

2013年3月 1日 金曜日

教育現場での裁判沙汰

昨日は、住んでみたい地区・場所として賃貸情報サイトで1位に選ばれた吉祥寺の住宅街で、未明に若い女性が、ルーマニア国籍の少年らに強盗目的で殺害されたという陰惨なニュースがテレビ、新聞で大きく報道され、そのニュースの陰に隠れた印象がありましたが、当方が以前から注目していた訴訟の判決が出ました。
吉祥寺での殺人事件が大きく報じられたの関係で、テレビ、新聞での報道は小さめでしたが、事件の筋は次のようなものです。

 1 小学校3年生のクラス担任をしていた40代の女性教師に、教師と保護者との連絡に使用される連絡帳に女児の保護者が教師を非難する文章を書くようになり、それがエスカレートして、教師に対する人格的非難に及ぶ内容の文章が頻繁に書かれるようになった。
 2 その結果、その女性教師は不眠症になって、このまま保護者の攻撃が続く限り、自身の教師生命が失われると思うようになり、非常に精神的打撃を受けた。それは、保護者による異常ともいえる教師への攻撃が原因なので、保護者は教師に対し数百万円の慰謝料を支払うべきである。

このような訴訟が提起され、一部報道機関では追跡報道をしており、当方も判決の行方に注目しておりました。
昨日の判決(さいたま地方裁判所熊谷支部民事部判決)で裁判所は、原告である女性教師の訴えを棄却して、請求を退けました。
新聞、テレビ報道では、裁判所は保護者の教師への訴え、要請等は一部配慮を欠くと言われても仕方ない箇所があることを認めつつ、それは、慰謝料を発生させる程悪質極まりないようなものではないので、女性教師に対する不法行為は成立しないと判示しました。
当方がこの訴訟提起を新聞、テレビ報道で知った際に感じた素朴な印象は、なぜ一教師と一保護者との関係が裁判沙汰になるまで拗れたのかということです。
単に教師と保護者の意見が対立しただけでは、普通は訴訟にはなりません(現にこのような類型の訴訟は初めてだそうです)。
但し、児童・生徒が注意、指導をした教師に暴力を振るって教師がケガをしたような場合、示談の話し合いが拗れて教師が保護者を訴えるケースは時々あり、これについては違和感を感じる人はまずいないと思います(そのような場合、児童・生徒は警察に補導されたり逮捕されていたでしょう)。
つまり、教師と保護者との感情が拗れに拗れた挙句、教師が保護者を提訴したと思われますが、その間学校は何をしていたのかと思います。
報道では、教師から学校側に報告が上げられ、学校側でも職員会議等を断続的に開いて対応を協議したようですが、当方の推測ですが、学校の管理者はおそらく自身に火の粉がかかるのを恐れ、この問題に積極的に介入しなかったと思います。
今後も教師と保護者との間でトラブルが発生することは十分予想されます。
そのようなトラブルが起きた場合、学校側がそのようなトラブルに介入して解決の方向を模索するようなことは期待出来ず、また、そうかと言ってそのまま放置しておくと、このような訴訟提起は教育現場を裁判沙汰に巻き込むことになって、一番の被害を受けるのは児童・生徒ということになります。
このようなトラブルを防ぐためには、教師と保護者との間にトラブルが発生しそうな段階で、早めに介入する第三者機関的な組織が必要だと思います。
その構成員(メンバー)は弁護士、元公務員(原則として教職経験者は含めない)、地域での信用が高い人物(長年地域で会社経営に携わっており、信用が高い人物)とすべきでしょう。
また、この報道で識者のコメントで極めて正鵠を得たコメントがありました。

もし、裁判所が教師の訴えを認めたら、同じような訴訟が全国で頻発する事態にもなりかねず、そうなると教育現場は砂を噛むような寒々しいものになってしまう。
それゆえ、裁判所はそれに歯止めをかけるために、教師の訴えを退けたのではないか。

当方もそのとおりだと思います。
裁判所が政治的な判断をすることは出来るだけ控えるべきだというのが司法界の常識ですが、今回は許容できる範囲で裁判所の政治的な判断が示されたと思います。

投稿者 田瀬英敏法律事務所(恵比寿の弁護士)

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