いじめ・体罰問題について

2014年7月28日 月曜日

44年前の悪夢の再現か??

週末、猛暑とゲリラ豪雨の日本列島を震撼させる事件のニュースが報じられました。
長崎県で高校1年生の女子生徒が自室で同級生の女子生徒を殺害して、遺体の首を切断したという猟奇事件です。
当方は、その事件のニュースに接して直ぐに44年前に起きた同じような事件が頭に浮かびました。
昭和44年、川崎市内にあるミッション系の私立S高校の1年生男子生徒が、同級生でもあり同じ寮で生活をしていた男子生徒を殺害し、その遺体の首を切断したという猟奇的事件でした。
事件が発覚のした後の加害生徒の取調べで、加害生徒は日常的に被害生徒からいじめを受けており、学校もそのいじめについて全く把握していなかったことがわかり、学校も批判の矢面に立ちました。
今回、被害生徒が加害生徒をいじめていたのかについては、まだ報道がありませんが、15歳の女子生徒が同級生を殺害しただけでも十分に衝撃的なことですが、遺体の首を切断したことは、おそらく過去に前例がなかったことだと思います。
それゆえ、被害者と加害者との間には言葉では言い表せない確執があったことだけは間違いないと思います。
それがいじめによるものなのか、それ以外のものによるものなのかは、今後、被害者、加害者のプライバシーを尊重しつつ慎重に警察が調べることになると思いますが、いじめが両者の確執の原因では無かった場合は、学校は生徒のプライバシーの領域にどう踏み込むことができるのかという非常に難しい問題を提起することになります。
いじめが原因の場合は、なぜ学校はこのようなおぞましい結果となるまで手を拱いていたのかという批判に晒されることは、過去の事例からも明らかです。
その意味で、いじめが確執の原因の場合であっても、そうでない場合であっても、学校の負担は今後より増えることは間違いないと思います。
そうすると、増えつつある学校の負担をどのような形で軽減するかということが今後の大きな問題になってくると思います。

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2014年6月11日 水曜日

橋下大阪市長の生徒隔離政策

市長(その前は府知事)に就任して以来、思い切った発言や政策提言で何かと話題となる橋下大阪市長が、小、中学校で極めて悪質な問題行動を起こす児童・生徒を「特別教室」に編成替えして、そこで改善教育を施すことを提言したところ、それは、問題のある児童・生徒の「隔離政策」であり、児童・生徒に対する差別感情を助長するものであるとの批判が巻き起こっております。
橋下市長は、従軍慰安婦発言でそれまで高止まりしていた支持率を大きく落とし、維新の会の退潮の呼び水になったことでも知られているように、非常に毀誉褒貶のある方で、好みは分かれると思います。
元々弁護士としてバラエティー番組を足がかりに政治家を目指した方で、当方は橋下市長の評価については是々非々ですが、今回の提言については賛成です。
というか、これまで自治体がなぜ、そのような施策を行って来なかったのかが疑問で仕方がありません。
橋下市長が特別教室で改善教育を施そうとする児童・生徒は、最早学校の自律に委ね切れない児童・生徒で、警察の介入を必要とすべき者達です。
小、中学校は義務教育であることから、これらの問題児童・生徒はこれまで学校の判断による「出席停止」措置が取られ、それ以降は事実上野放し状態にされていたのが現状です。
そのような児童・生徒の大部分が家庭に問題があり、そうすると家庭での改善、更生は期待できないので、そのような生徒・児童はどんどん非行化が進む悪循環となるのです。
まさに「臭い物に蓋」的な施策が教育現場で当たり前に行われてきたと言ってよいでしょう。
それに対して、橋下市長の提言している施策は、重篤な問題行動を繰り返す生徒・児童を集めて改善教育を施すものですので、これまでの施策に比べ、ずっと現実的です。
問題は、改善教育の内実をどのようにするかです。
この改善教育の中身が問題のあるものであったなら、それこそ橋下市長を批判している人たちが言っているように、児童・生徒の差別化の助長に繋がりかねません。
これまでにない取り組みですので、まさに「トライアンドエラー」(試行錯誤)の連続だと思いますが、試行錯誤を繰り返して、よりよい制度として結実することを祈らずにはいられません。

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2014年3月27日 木曜日

いじめられた子の反逆

ここ最近非常に後味の良くない事件が立て続けにおきました。
1つ目の事件は千葉県の柏市でインターネット依存症の20代男性が自分の住むマンションの目の前で刃物で通行人を殺傷した事件です。
2つ目は、ベビーシッターサイトに登録していたこれも20代男性のマンションの室内で預かった幼い子が死亡した事件です。
新聞やテレビ、週刊誌の報道がニュースソースなのでまだ100%それが原因だったとは言い切れませんが、この2件の事件の容疑者はいずれもいじめを受けていたらしいということです。
もし、犯人が本当に学校でいじめを受けていたのであれば、柏市の犯人のように引きこもってインターネット依存症になったり、シッターサイトを通して預かった幼い子を自室で死なせてしまった犯人のように、執拗なまでに幼児に関心を持たなかったと思います。
これまで20代で大変に凶悪な事件を犯した犯人の相当数がいじめの被害者だったという統計も出ております。
つまり、それだけいじめで傷ついた子の心の闇は深いということだと思います。
いじめを受けた子の多くは心に傷を抱え、その傷は自傷行為を繰り返すことや、他人に対する異常なまでの攻撃的性格を増長させたりするなど、多方面に影響を及ぼします。
いじめで傷ついた子の心の爆発がどのような方向に向かっても、それは社会に害を与えこそすれ、決して有益なことではありません。
その意味で、いじめを少しでも少なくする取り組みと同時に、いじめで傷ついた子の精神的なケアをどうするかも喫緊の問題と言ってよいと思います。
ただ、現在のいじめは非常に陰湿で外部に発覚しにくい形で行われることが多いため、いじめで傷ついた子をどのように見つけるかということは非常に難しいかもしれません。
色々な方策を実践し、試行錯誤しながらよりよい方法を発見していくしかないと思います。

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2014年2月24日 月曜日

いじめの訴訟

いじめ問題で訴訟になる場合、被害生徒の多くは加害生徒、その親、公立学校であれば都道府県(区)、私立学校であれば学校法人を被告として訴訟を提起します。
但し、加害生徒が小学校低学年から中学年の場合は、民法上不法行為責任を負わないので、被告になりません。
それでは、何歳くらいから不法行為責任を問われるのでしょうか(賠償責任を負うかということです)?
これについては、法律で何歳から不幸行為責任を負うとの明確な定めがありません。
それゆえ法律の解釈と運用に委ねられており、今の法律の解釈・運用では中学生になった場合は不法行為責任を問われることは間違いなく、小学校3、4年生の場合は不法行為責任を負わないことも間違いありません。
そうすると、小学校5,6年生(年齢で言うと11、12歳)が限界事例だということになります。
最近の傾向は、非常に過酷で粘着質のいじめが行われた場合は小学校5,6年生でも不法行為責任を負うとされる事例が多くなりました。
また最近の事例では、いじめがはっきりしている場合、被害生徒は加害生徒の親の責任を追及せず、ダイレクトに加害生徒に対して訴訟を起こすケースも増えています。
加害生徒の親を訴える場合、訴訟で親の不十分な躾・教育がいじめの原因となったことを証明しなくてはならず、それはそう簡単なハードルではありません。
しかし、いじめの事実だけを証明すれば、少なくとも加害生徒に対してはそれほどの立証の負担をせずに賠償請求を認めさせることが可能となります。
そのため、いじめの事実がはっきりしている場合は、被害生徒が加害生徒を訴えるという訴訟が多くなっているのです。
これはどういうことかと言うと、いつ貴方のもとに裁判所から訴状が送られてくるか判らないということです。
未成年者が訴えられる(被告となる)場合、訴状の被告の欄に未成年者の氏名と親の氏名を記載しなくてはならず、親も被告として訴えられたという意味ではないので、注意が必要です。
そのような訴状が裁判所から届いたら、弁護士に直ぐに相談ないし依頼して指示を仰がなくてはなりません。

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2013年11月20日 水曜日

学校事件・事故被害者全国弁護団(続)

前回、本年11月17日(日)に行われた学校事件・事故被害者全国弁護団の創立総会の話をしましたが、創立総会終了後に引き続いて開催された懇親会の話をしたいと思います。
懇親会は参加希望者が事務局の当初の予想を大幅に上回ったため、明治大学の裏手にある山の上ホテルの中華料理店の他に、近いエスニック料理の店も追加で会場に加えるなど、2つの会場で行われました。
私は、山の上ホテルの中華料理店で開催された懇親会に出席したのですが、そこでも衝撃を受ける出来事に遭遇しました。
中華料理店での懇親会で私が座ったテーブルには、私をこの弁護団に誘って下さった知り合いの女性弁護士の他に数名の40歳代から50歳代くらいの女性がおりました。
懇親会の宴もたけなわになった頃、幹事の提案で参加者一人一人が短いスピーチをすることになりました。
私の知り合いの女性弁護士を除くと、同席した女性は全員いじめ・体罰によってお子さんを自殺で亡くされたお母様方でした。
その後もそのようなご遺族の方の短い挨拶が続き、正確には数えていないものの、懇親会に出席された弁護士以外の一般参加者の8割近くがご遺族の方でした。
創立総会、懇親会に出席されたご遺族の多くは、子供をいじめ・体罰で亡くされた同じ思いの遺族の精神的な力になるべく活動を続けており、その中にはNPOを組織して全国的な活動をされている方もおりました。
このような活動ができるまで、いったいどれだけの涙を流したのかと考えると、自分が同じ境遇になった場合、到底そのようなことはできないと思いました。
本当に頭が下がる思いです。
我々弁護士は主として法廷闘争という形でご遺族の方の力にはなれますが、心のケアまでは十分にしてあげることはできないでしょう。
それゆえ、このような方々と弁護団がコラボすることによって、学校事件、事故で我が子を亡くされたご遺族の支えになってあげられるのではないかと思います。
また、懇親会では現在法科大学院で弁護士を目指して勉強中の法科大学院生もおり、彼もご遺族の一人です。
司法試験に合格して弁護士になった場合は是非我々弁護団に入りたいと言っておりましたが、もし、弁護団に入ってくれるとしたら、それこそ、今年ペナントレース、日本シリーズを通して大活躍をした楽天のマー君なみの超強力新人になるでしょう。
彼が弁護団のマー君となる日を祈らずにはいられません。

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