いじめ・体罰問題について

2013年8月 6日 火曜日

いじめ問題と時効

 いじめを受けた生徒がいじめを苦にして自殺したり、自殺未遂を図ったりするケースが相変わらず後を絶ちません。
 そのような場合、被害者の生徒、その親はいじめた加害生徒、地方公共団体(市や県)に対し民事訴訟を提起することも多いと思います。
 その場合、大きな壁として立ちはだかるのが「時効」という法律の壁です。
 いじめで加害者や市、県に対して民事訴訟を提起する場合、法律上は不法行為に基づく損害賠償請求、慰謝料請求という形式を取ります。
 しかし、不法行為(わかりやすく言えば故意・過失で他人に損害を与える行為でいじめはまさ不法行為そのものです)を理由とする請求権は、3年経つと時効にかかってしまい法律上消滅してしまいます。
 個人と個人との借金が10年経つと時効で消滅することと同じようなものです。
 典型的な不法行為である交通事故の場合、それが時効で消滅することは実際はそれほどありません。
 交通事故の場合は損害保険会社が間に入るということもありますが、原因と結果がはっきりしており、争いの中心は殆どが損害額です。
 不法行為による損害賠償請求権は、訴訟を提起することで時効がその期間停止しますので、いじめによる被害で加害者等を訴える場合は、3年以内(最後のいじめが行われた時点から3年です)に訴訟を提起しないと、時効で消滅してしまうのです。
 しかし、交通事故の場合と異なっていじめの被害者やその父兄がこの請求権を時効にかけてしまうケースが相当多いと思います。
 それには様々な原因が考えられますが、次のような理由が一番大きいと思います。
 1 まず、いじめで生徒が自殺したり、自殺未遂を図ったような場合、生徒や父兄はその苦痛から立ち直って訴訟を提起しようと決心するまで相当な時間がかかり、ようやくその決心をしたとしても既に時効になっているケースです。
 2 次に、いじめによる自殺(未遂を含めて)の場合は、いじめをした事実、その自殺はいじめが原因であると言い切れるかどうか(これをいじめと自殺との因果関係といいます)
 これらのことを裁判で立証しないとならず、特に因果関係の立証は大変難しく、その立証のための資料を集めているうちに時効にかかってしまうケースです。
 いじめによる自殺(未遂)の事案で、被害者側が、ようやく決心を決めて訴訟提起をすることにしても、時効になった場合、その憤懣をぶつける先がないわけですから、当方は、被害者側は、ある意味で二重の精神的被害に遭ったようなものだと思います。

 3年という期間は案外すぐに経過してしまいます。
 ただ、事が法律で決まったことなので、法治国家に済む我々としては、時効を無視することはできません。
 但し、仮に形式的に時効になっていたとしても、法的な裏技がないわけではありません。

 それゆえ、仮にいじめが原因で我が子が自殺(未遂)した親御さんは、単純に最後のいじめから3年経ったので時効になったものと諦めず、当方にご相談下さい。
 時効をクリアできるかどうかはケースバイケースですが、上手くすると裏技を使って時効の壁を取り除けるかもしれないのです。

投稿者 いじめ・体罰についてのブログ(田瀬英敏法律事務所) | 記事URL

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